CB400F・個人的探求の記録

憧れだったCB400Fに乗って17年が過ぎた…が、いつまでたってもエキスパートからはほど遠い、筆者のつれづれを綴る。とにかくノーマルのヨンフォアが好き。外観に影響を及ぼさないアップデートが好き。

McIntosh マッキントッシュのプリアンプの変遷について

すっかりバイク(CB400F)ブログになっているが、たまにはオーディオの話を。
今日書きたいのは、マッキントッシュのプリアンプの歴史というか変遷についてだ。
※オーディオとか知らん!そんなものに興味はない!って人はスルーして下さい…
長いので

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マッキントッシュのプリアンプの各機種(個人的に興味があったC28〜C40まで、トランジスタ初期のC24〜C27も少し)の諸々について、日本語で網羅的に書かれた記事が発見できなかったため(2021年現在)、自分が集めたデータをまとめておこうと思い立った。それがこの記事です。

経緯はこうだ。
今年の2月、ご縁があってわが家にALTEC 612Cがやってきた。正確には612Cキャビネットに605Bユニットがマウントされたもの。早速配置して鳴らしてみたが、今までハーベスHL5をメインスピーカーとして使ってきたシステムだったから、スピーカーの特性がまるで違っていて、そのままでバッチリ……って訳にはいかなかった。

で、あれこれやった結果、いっそMcIntoshのプリを入れようってことにしたのだが、マッキンのプリはこれまで一度も使ったことがなかったため、どの型がどの年代でどんな機能を持っているのか全然わらかず、理解するのに少し時間がかかった。

例えばC29よりも前にC32が、C28よりずっと後にC27が発売されていたり、C34VとC30が同時に発売されたのがC31Vの前だったり……機種番号は発売年順になっておらず、ぱっと見だと機種番号と機能にはあまり関連性がなくて、思いつきで番号を振った?って感じがするほど。もちろんランダムに割り当てられたのではないから、ルールというか成り行き(?)を理解すると、それなりの一貫性が見えてくるのだけど。

ネットで検索して日本語の記事を読み漁ったところ、間違っているものも少なくない(ショップの商品説明でさえ全然違うことを書いていたりする)が、まあ無理もないだろう。

結論から書くと、個人的に興味があるMcIntosh C28(1971年発売)〜C40(1992年発売)までの変遷は以下になる。文章だとわかりにくいのでexelで表にしてみた。

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*大雑把なタイプの違いで色分けしてある。青系は2バンドEQの機種、緑系は5バンドEQ、黄色はリモコン付&AV対応の機種。
*国内定価に幅があるのは何度も価格改定が行われていたため。


では、各機種の機能面と中古市場面からの所見を書いてみよう。
※全ての音を聴いたわけではないので、音質的な違いにはあまり触れないでおきます。
※画像はネットの拾いものを画像処理したものだけど悪しからず。


まずはC281970年発売だが、アルミ無垢(?)のシンプルなダイヤル類は1960年代までのデザインを継承しており、見かけの印象がこれ以降の機種とけっこう違う。集積化が進んでおらず中身はぎっしり。ピカピカなら庶民には高値の花だった感がプンプン……なんだろうが、中古で見かけるのはくたびれた物が多い。知人が使っているのもかなりのご老体に見え、大丈夫かこれ?って感じだったし(実際、ちゃんと鳴ってはいるものの、うっすらと発信音が出てしまっていた←いつの間にか治ったみたいだけど…)。生産台数は約21,800台で、おそらくマッキントッシュのプリアンプの中ではトップと思われる。

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上が1978年発売のC29、C28の正統な後継機。ダイヤルが変わっただけで、ぐっと近代的に見える。これ以降のマッキントッシュのプリの基本形という感じで、デザイン的には一番好きかも。

C28はヴォリュームでパワーオンが何ともクラシカルなのだけど、C29には赤いパワースイッチが搭載されている。セレクター類にも選択中を示す赤ドットが追加され、少し華やかに。この機種は1985年まで売られていたので、完成度が高かったのか?と推察。きっと内部のマイナーチェンジもあっただろう。生産台数は7300台程度のようだ。

音的には、C28もC29も現代のシステムに組み込んだものを聴かせてもらっても、あまり違和感を感じなかった。このあたりがマッキンのプリアンプの人気が衰えない理由かもしれない。C28の方が若干モッサリしている気もするが、言い方を変えたら音が太いような感触でもある。あくまでシステムとの相性だから、どちらが良いということは無いようにも思う。現実はヤレ・痛みによる個体差の方がずっと大きいはず。(両機種とも使い込んだわけじゃないので戯れ言程度に読んで下さい)

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C321977年、C29の一年前にリリースされた。発売順でいうと27の次になるが、新機軸ということか32に飛んでいる。ここで5バンドのEQが初めて搭載された。内部配線には、パソコンなんかの内部でよく見るのと同タイプの、平形グレーのフラットケーブルが使われている。そいつの劣化があるとややこしいらしい。製品寿命は短めだが、生産台数は8600台と、比較的多め。4年後にはC33へとモデルチェンジする。

赤いパワースイッチとダイヤルデザインはC29ではなく、正確にはこの機種(とC27)から。ダイヤルはデザインだけでなく、クリック(カチカチ・・って感触)が追加され、操作感も変化している。

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年代を進める前にC32と同時に発売されたC27の系譜を見てみよう。この機種は1968年発売のC26の正統な後継機種で、機能・デザインを受け継いだものになっている。
C26のダイアル類はC28と同じデザインで、C27はC29と同じ。このあたりまではC26→C27 C28→C29と、理に適った番号展開になっている。

マッキンのプリアンプがトランジスタ化したのは1964年のC24から。C24はチューブの名機であるC22のツートーンなデザインを引き継いでおり、いかにもクラシカルな外観だ。ちなみに知人がC24を愛用しており、アルテックの同軸SPとの組み合わせが良い雰囲気で、レンジが狭いとか抜けが悪いとかは感じなかった。

次のC26からフロントがブラックパネルのみで構成されるようになり、徐々に現在のマッキンの定番デザインへと近づいていく。ツマミの形状、レイアウトそして機種名と、この時代のマッキンプリは綺麗なグラデーションを描きながらリニューアルされていて、とても解りやすい。

ちなみに生産台数を見ると、C22が8200台、C24は5150台、C26は15,200台、C27は3500台。C28が2万越えってことからも、McIntosh製プリアンプの黄金期は1960年代後半〜1970年代半ばと言えそうだ。

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話を戻そう。C32を改訂して作られたのが1981年のC33。機能はほとんどC32と同じだし、マイナーチェンジ版というか、問題点を煮詰めて完成度を高めた感じか。(フラットケーブルも使われなくなった。)

内部は集積化が進んだのか、スッキリした印象でC32とはけっこう違っている。そのせいか、音が違うという感想もよく見かける。個人的には5バンドEQは必須だし、安定性も大切なので、このあたりからが狙い目になってくる。生産台数は3900台と少なめ。

↑は当時の広告で、定価がものすごいことになっている。年代からして、為替がまだアレでアレだからこんな値段なのか。最初の表に付けた日本での定価とアメリカでの定価の推移の違いも、世相を反映しているようで興味深い。

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これが1985年のC34V。C32から始まったデザインの完成型だ。にもかかわらず、フロントパネルに「AUDIO / VIDEO CONTROL CENTER」と入ってしまっているせいか、中古市場での人気はC32/33に劣る感じがする。しかし「VIDEO」と入ってはいるものの、このアンプはいわゆるAVアンプではない。単なるプリアンプであり、内容的にもC33ほぼそのままと言っていいだろう。

「別売りのビデオコントロールユニットを(コネクタを介して)付ければ映像も連動してコントロールできる」というだけで、映像入力端子や映像信号のセレクター、スイッチの類は全く搭載されていない。C33との違いは僅かで(インプットセレクタからオンオフ信号を引っぱったくらいか?)、内観もそっくりだし、おそらく音質的にもさほど違いはないはず。でも中古は微妙に不人気で、何とも不憫な機種だが、タマ数は多いし(生産台数は8900台)、狙い目とも言えそう。

この時代のAVコントロールアンプブームを意識してか、マッキントッシュもいくつかの「いわゆるAVアンプ」を出している。それがC31V、C35、C37あたり…だが、正直興味がないのでスルーします。

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写真は1985年リリースのC30。C32/33から数年後にリリースされたのにC30……と、またまたやこしい名前だ。この機種は、C33からテープ録音用のコンプ類と小容量のパワーアンプ(この機種以前までは一貫して搭載されている)を省いたもの。C33-コンプとアンプがC30で、C33+ビデオコントローラー端子がC34Vということになる。なので、C30の内部は、取り払った機能以外は概ねC33/34Vと同じに見える。

※C30は1985年で販売終了になったC29からパワーアンプ類を外して5バンドEQを足した構成にも見えるため、数字の並びの影響もあってか「C30はC29の後継機」と書かれていたりする。しかし、内部構造の系統としてはC33〜C34Vに近く、音の傾向もそちらに似ているのは間違いない。どちらかというと「C30はC33/34Vの亜種」という書き方が正確だと思われる。(では「C29の後継機」は何か? 構成からいうと1992年発売のC36かもしれないが、C36はC40の亜種で、C29と直接の繋がりはない。)

C30の筐体サイズはC33までと同様だが、上面にあったミニモニターアンプ等のダイヤル・スイッチは機能削減と共になくなっている。あれはガジェットとしては面白いが、実際使うかというと使わなそうで、かといって壊れていると気になだろうから、余計な心配をしなくていいC30は気楽で良い。また、プリなのにパワーアンプを内蔵しているのは、音質よりも安定動作(故障しにくさ)に悪影響がありそうで、無いに越したことはないと思う。

C30では、McIntoshのロゴと機種名が中央に配置されている。C32〜34Vはスイッチ類の左端揃えになっていたので、この部分も(細かい話だが)若干違った雰囲気を醸し出している。C28/29はロゴだけでなくダイヤル配置もシンメトリー配置で、見ていてとても落ち着く感じ。さらに細かいことを書くと、C30の機種名はC33とかC29と同じフォントで似た字送りで書かれているが、C34VはC40など、この後の機種に受け継がれる新しいフォントと字詰めになっている。その点も若干印象が異なるポイントだ。

色々調べていくと、この機種が一番自分に合っている気がした。使わない機能(=パワーアンプ部、コンプ、ビデオ関連の連動など)がなくてスッキリしてるし、欲しい機能(=5バンドのEQ、C32流儀のデザインなどマッキンらしさ)はしっかり採用されているのが良い。そう結論づけて1ヶ月ほど探し回り、ヤフオクを避けて何とかショップから入手できた(オークションは怪しいのが多く、結局高くつきそうだから避けたかったのだ)。生産台数は1700台程度と少なく、中古市場でのタマ数も少なめだが、かといって全く見かけないってこともない。価格はC32/33に比べると若干安めなのも嬉しい。

※そういえば、C30とC34Vの定価に疑問がある。調べた範囲では、国内定価はC34Vが68万円で、C30が70万円以上だった。……これ、おかしくないか? 実際、USでの定価はC34Vの方が約1.5倍高価だ。「オーディオの軌跡」にもC34が68万円とあり、とするとC30は50万円程度が妥当に思える。なので、上の表のC30の価格に関しては怪しいと思って下さい。

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その後、1992年に全面的なリニューアルが行われ、フラッグシップとして出たのがC40。スイッチ(リレー)類が刷新されていたり、筐体サイズが変わっていたりと、一気に近代化した印象。音質的にはマッキンらしさが薄らいだと書かれることが多いが、中古価格は高価で人気は高い。*これ以降の機種の生産台数は判らなかった。

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同時に発売されたC36。これも数字とリリース年が混乱する機種だね(笑) 外観デザインやEQの構成がシンプルで、C29を素っ気なくした感じ。敬愛する松本の老舗ジャズ喫茶「エオンタ」さんは敢えてこの地味な機種をセレクトし、アルテックA7改を鳴らしている。同店のパワーアンプはsound & Parts製のプッシュプルだから、システム全体で見るとC40系統のスッキリした風味のこのプリアンプのハマりが良いのかもしれない。

ちなみに、C36と同じタイミングに同じデザインのC38って機種も出ており、違いはリモコンの有無のようだ。C36もC38も、中古市場ではあまり見かけない。

C36/38/40のタイミングでパネルデザインはシンメトリーに戻った。細かいところでは、セレクターに赤ランプが付いた。これはC29の意匠の復活だ。しかし、デザイン的にはやはりオリジナルたるC29が一番まとまっているように思う。

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以上、1970〜80年代を通してのMcIntoshのプリアンプの歴史を追ってみた。
どの機種も味わい深く、それぞれに良さがあるとしみじみ思う。お抱えの整備士がいて、デッドストックやミントをがっつり整備して使えるなら、C28〜C33あたりをじっくり聞き比べてみたいものだ(妄想)

当然そんなことは叶わないので、運良くショップからC30の良品を比較的安価に買えただけでも充分幸せだと思っておこう。5バンドのEQはやはり素晴らしい。ライブハウスで何年もPAをしていた身としては、EQで微調整できるのは本当に有り難いし、自然に思える。単体のグライコではなく、それがプリに内蔵されているのがまた良い。正直、ラウドネスも解りやすくて大好きだ。存分に楽しませてもらうことにします。


※生産台数は http://www.mcintoshcompendium.com/mcintoshtimelines.htm このサイトを参考にした。合っているかどうかは不明。


※ここでは取り上げなかったが、McIntoshにはプリメインアンプも存在する。この年代のものはプリアンプのデザインをベースにしていて、1966年のMA5100(C24ベース)、1972年発売のMA6100(C28ベース)と、1978年発売のMA6200(C32ベース)の3機種がある。 米国の定価設定はプリアンプよりも高く、内容もしっかりしているが、比較的不人気で中古価格は安めだ。これらのプリメインアンプを手に入れてプリアウトを使ってプリアンプとして利用するのも、安価にマッキンプリを味わうのに有効かもしれない。