CB400F・個人的探求の記録

憧れだったCB400Fに乗って17年が過ぎた…が、いつまでたってもエキスパートからはほど遠い、筆者のつれづれを綴る。とにかくノーマルのヨンフォアが好き。外観に影響を及ぼさないアップデートが好き。

オーディオテクニカ・AT-OC9XSL レビュー(使っての感想など)

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AT-OC9XSLは、オーディオテクニカが2019年に発売したMCカートリッジ。
ここ10年弱でAT-OC9/II(中古)→AT-OC9/III(新品)と使ってきて、訳あって今年に入ってからAT-OC9XSL(新品)を入手、メイン機として使い始めました。

ネット上で検索したところ、個人ユーザーによるレビューはほとんど(2020年3月時点では全く)見かけなかったので、某所に書いた記事に加筆しつつ、ここに載せようと思います


AT-OC9XSLは外見的にもスペック的にも、前身にあたるAT-OC9/IIIから(←※詳しくは文末に書きます)大きく変化してません。細かい変化を挙げるなら、カンチレバーが若干太くなったのと、重さが若干(0.4g)軽くなった、シェルへの取り付け方法が変更された、再生周波数が微妙に違う、そして定価が2万円以上upした(!)、メーカー保証が3年から1年になった(←これは重要。何気に大きい変化)、といったところ。

ぶっちゃけ消費税アップと共に大幅値上げするためのモデルチェンジにも見えますが……結論から書くと、内容的には良くなっている、と思います

使っていて感じるのは、音の傾向もAT-OC9/IIIとよく似ているということ。繊細さ・高い解像感(←若干新機種の方が良くなってる…気もする)・キレ味等の美点にあまり変化がなく、これはとても嬉しかった。その上で、旧機種では少し物足りなかった低域がやや豊かになり、微妙にバランスというか全体の雰囲気が良くなったように感じました。データ上では/IIIの方が再生周波数範囲が若干低域側に広いのですが、聴覚上はXSLの方が豊かに感じるのが興味深いです。あと、公平な比較になっているかは判らないけど、新機種の方が若干トラッキング性能が良く(←カンチレバーと同時に駆動系も見直されている可能性あり)、さらに扱いやすくなったような気もします。

総合すると、概ね正常進化と言えそうです。どちらが好きかと聞かれると新機種のAT-OC9XSLになるかな。

ただ、旧機種から買い換えるとなると、価格に見合ったアップデートになるかは謎ですね。今のところ値引率はとても低く、こなれた頃のAT-OC9/IIIの価格の倍近くで売られています。ネット上の記事は極端に少ないし、(少なくとも国内では)あまり売れていないんでしょうね。

余談ですが、2017〜8年頃はAT-OC9/IIIの新品が、ネットの安売りサイトで(特に探さなくても)税込み4.5万円弱で買えました。いま思うとメチャクチャお買い得です。AT33monoも2.5万円程度だったし、共にもう一本買っておけばよかったと後悔しています。
…悲しくなるので過去のことは忘れましょう(笑) 

まあしかし、現行のAT-OC9XSLは、諸々の他社製高級カートリッジに比べると内容に比べてリーズナブルで、良い製品であることは間違いありません。解像感もあるし、広めの帯域をフラットに、しっかり平等に鳴らしてくれる印象。変な色づけはなく、良い意味でデジタル音源に似た特性というか、原音のソースに高度に忠実な音を出すように思います。
個人的には、レコードの再生音にアナログの味(?)のようなものを求めるなら、ターンテーブルやトランス、あるいはコントロールアンプでやった方がいいと思っているので、高次元でクセのない(?)優等生的なこのカートリッジは、音の入り口として最適だと思います。


AT-OC9/III(定価7.8万円)の後継は、2019年にラインナップされた5機種のうちどれなんだろう、という話を。

価格的には定価7万円の/XMLや、定価8.5万円の/XSHも後継と言えなくもない。ただ、チップが「特殊ラインコンタクト針」なのは最上位モデルの/XSL(定価9.8万円)であり、スペック的にはやはり「AT-OC9/IIIの後継機種はAT-OC9/XSLである」と言えそうです。

というか、訳あってオーディオテクニカのサポートの方と話したところ、そちらでも前述の認識をされてたので間違いないでしょう。実際、AT-OC9/IIIが保証期間内で交換対応になる場合、AT-OC9/XSLとの交換になるようです。(←2020年3月時点に個人的に調べた情報なので、メーカーの公式見解ではありません)

※※使用ターンテーブルはマイクロBL-101、トーンアームはSAEC WE407/23。シェルは旧テクニハードシェルの取り付け穴をドリルで広げて装着。アンプ・トランス類はヒミツ、リファレンススピーカーはHarbeth HL5。

※※マイクと解析機器を利用した訳ではなく、個人の印象レベルの比較です。また、比較に使った個体も1つずつなので「それって個体差や状態の差では?」というツッコミには反論できません。印象としては、個体差以上の差があるように思いましたが、あくまで個人の感想です。

※※参考まで:自分はオーディオについて、偽科学的に怪しげな指向性は好きではありません。また、(例えば)カートリッジを留めているビスの材質・形状にまでこだわって、自分の耳を頼りに徹底的に好みの音を探求する……的な趣味もありません。

オーディオの評論・評価は解析機器を使ったうえでデータを参照しつつ行うべきで、それ以外のレビューは読書感想文や紀行文に等しいと思っています。私の記述もそのようなものとして、お読み頂けたら幸いです。

2021年春追記:
数ヶ月前、メインスピーカーをHARBETH HL5からALTEC 612C(605Bマウント)に変更しました。それに伴ってプリアンプにMcIntoshを入れたり細々と変更を加えたのですが、プレーヤーやカートリッジは変える必要を感じず、この記事を書いた頃のままで続投としています。ちなみにMCヘッドアンプ/トランスはDENONのPRA-2000Z(プリアンプとしては使っていない)がメインです。

自分の状況だとHL5よりも612C/605Bの方が自然な鳴りに思えるのですが、AT-OC9XSLが繊細で良質なソースを提供してくれる感覚は前にも増していて、使う比率が上がっています。

2022年夏追記:トーンアームとの相性について
このカートリッジを使い始めた頃、自分のメイン機材に搭載されていたアームはSAECのWE407/23でした。その後、SL-1200系のアームやSMEの3009、3012と組み合わせたわけですが……。AT-OC9XSLは、トーンアームの違いや微妙なセッティングの影響を受けにくいな、と思いました。良い意味で安定している。まあ、組み合わせや追い詰め方にによってキラリと輝く(SME3012とDL-103みたいに)ことがなかったので、つまらないと言えばそうだけど。ターンテーブルの駆動方式に関しても同じように思いました。環境に左右されにくく、安定してそれなりに良い音を拾ってくれる万能選手!じゃないかな。めっちゃ褒めてるようだけど、万能選手なんて何の魅力も無い!って人も多いのがオーディオの世界(笑)ですよね。

自分もいつの間にかターンテーブルはイギリス製のフローティング機構付きの有名機種に替え、カートリッジは某103とか某15typeIIIとかに原点回帰していて、AT-OC9/XSLはサブ的な立ち位置になってます。